菊池寛の名作短編『恩讐の彼方に』が、永山瑛太さん主演で映画化されることが2026年9月25日に発表されました。監督・脚本は大森立嗣さんで、公開は2028年の予定です。岩壁に鑿(のみ)と槌(つち)で穴を掘り続ける男の壮絶な過去を描く物語で、原作は大分県の名勝「青の洞門」の史実から生まれた作品です。私はこの発表を読んで、企画の骨格と2年後という公開時期の両方にじっくり注目したくなりました。発表の内容と、原作・青の洞門の背景、永山さんと大森監督の歩みを整理してお届けします。

何が発表されたのか|映画『恩讐の彼方に』の概要
今回の発表内容を、各社の報道から確認できる範囲でまとめます。(出典:ENCOUNT、映画.com、ムビコレ)
- 作品名:『恩讐の彼方に』(菊池寛の短編小説が原作)
- 主演:永山瑛太さん
- 監督・脚本:大森立嗣さん
- 公開:2028年に全国公開(2028年の劇場公開を目指すと報じた媒体もあります)
- 製作・配給:ツインエンジンとヨアケの共同製作・共同配給
- 撮影状況:2026年5〜6月に京都や大分を中心に第1期の撮影を終了。2027年の第2期(冬パート)の撮影に向けて、並行してポストプロダクションが始まっている
あわせて、巨大な耶馬溪(やばけい)の岩壁を見つめる主人公のファーストカットも公開されました。物語の舞台は、奇岩が連なる壮大な渓谷。遥か下には大河が流れ、渦を巻いています。その高い峰にそびえる岩壁の前で、ひとりの男が鑿と槌を手に岩を打ち続ける——。やがて明らかになっていくのは、謎めいた男の壮絶な過去で、「男は何者で、何を求めているのか」という問いが物語を貫いていきます。キャストやストーリーの詳細は、今後発表される予定です。
原作『恩讐の彼方に』とは|1919年発表の短編小説
原作は、日本を代表する文豪のひとり・菊池寛さんが1919年(大正8年)に発表した短編小説です。大分県中津市にある名勝・耶馬溪の「青の洞門」にまつわる史実をもとに、禅僧の人生へ大胆な創作を加えて書き上げられました。(出典:ムビコレ)
タイトルの「恩讐(おんしゅう)」は、恩義と怨み、つまり相反する感情を指す言葉です。それを「彼方に」超えていく、というタイトルそのものが物語の主題を語っています。映画の製作側のコメントでも、この作品は「善と悪、自分と他人、過去と今と未来、そして人間と自然が渾然一体となり、ある境地を垣間見るような小説」と表現されています。(出典:映画.com、プロデューサーの吉村知己さんのコメント)
ちなみに、菊池寛さんの作品は著作権の保護期間が満了しており、『恩讐の彼方に』も青空文庫などで無料で読むことができます。映画の公開まで約2年あるので、予習として原作を読んでおくのも面白い時間の使い方だと思います。短編なので、通勤時間や就寝前にも読み切れる長さです。

モデルになった「青の洞門」の史実
物語の下敷きになっている青の洞門は、実在する史跡です。中津市の公式ページによると、その成り立ちは次のように伝えられています。(出典:大分県中津市)
- 諸国巡礼の旅の途中で耶馬溪に立ち寄った禅海和尚が、極めて危険な難所「鎖渡(くさりわたし)」で人馬が命を落とすのを見て、慈悲心から享保20年(1735年)に洞門開削の大誓願を興したと伝えられる
- 托鉢勧進によって資金を集め、雇った石工たちとともにノミと鎚だけで掘り続けた
- 30年余りを経た明和元年(1764年)に、全長342メートル(うちトンネル部分は144メートル)の洞門が完成した
- 寛延3年(1750年)の第1期工事落成の大供養以降は、通行料を徴収して工事費用に充てており、日本初の有料道路とも言われている
江戸時代の耶馬溪は、巨大な奇岩が連なる絶景として知られる一方、通行には大きな危険が伴う場所でした。人々は鉄の鎖を命綱にして険しい岩壁を渡らなければならず、多くの人や馬が滑落して命を落としたといいます。(出典:ENCOUNT)そこで一人の僧が、人が安全に通れる道をつくるために岩を掘り抜こうと決意した——この驚くべき実話が、100年以上前に一編の小説として結実したわけです。
なお、中津市のページによると、現在の青の洞門は明治39〜40年の大改修で大部分が原型を破壊されたとされる一方、トンネル内の一部には明かり採り窓などの手掘りの部分が残っています。映画の公開後には、舞台になった土地を訪れる人が増えるかもしれません。
永山瑛太さんと大森立嗣監督|久々のタッグ
今回の企画で特に注目したいのが、永山さんと大森監督が『光』(17年)以来のタッグになる点です。二人はこれまで、『まほろ駅前多田便利軒』(11年)、『まほろ駅前狂騒曲』(14年)、『光』(17年)で組んできました。(出典:ムビコレ)
大森監督は、人間が抱える凶暴な暗部やむき出しの感情を描きながら、その人物を包み込むようなまなざしで作品を生み出してきた監督と紹介されています。プロデューサーのコメントによれば、大森監督は長年にわたって脚本を開発し続け、「粘りに粘った」末に「この稿で行けるのではないか」という達成感を得たのだそうです。そして必要だったのが「主人公を演じることができる、屈強な俳優」——それが永山さんだったといいます。「理屈を超えて、映画と溶け合うような俳優」という評価も添えられていました。(出典:映画.com)
ちなみに、大森監督とプロデューサーの吉村さんは、前作の『おーい、応為』(25年)に続いて時代劇が2作続くことになります。撮影初日は、再び京都の松竹撮影所に戻ってこられたことが「喜ばしく光栄」だったとも語られていました。時代劇の撮影所文化を感じさせるエピソードで、ものづくりの現場の空気が伝わってきます。
永山瑛太さんのプロフィールと歩み
永山瑛太さんは1982年12月13日生まれ、東京都出身の俳優です。モデルとして活躍したのち、2001年10月にドラマ『さよなら、小津先生』で俳優デビューしました。(出典:ORICON NEWSのプロフィール)
- ドラマ『WATER BOYS』(03年)、『オレンジデイズ』(04年)、『のだめカンタービレ』(06年)などで注目を集める
- NHK大河ドラマ『篤姫』(08年)、『西郷どん』(18年)に出演
- 映画『ディア・ドクター』(09年)で第33回日本アカデミー賞助演男優賞、第52回ブルーリボン賞助演男優賞を受賞
- ドラマ『最高の離婚』(13年)、『リコカツ』(21年)、『ミステリと言う勿れ』(22年)など話題作に多数出演
- 映画『まほろ駅前多田便利軒』シリーズ、『友罪』(18年)、『怪物』(23年)など、映画でも存在感を発揮
- 2020年1月、芸名を「瑛太」から現在の「永山瑛太」に改名
私生活では、歌手の木村カエラさんが妻で、2010年10月に第1子、2013年5月に第2子が誕生しています。弟は俳優の永山絢斗さんです。(出典:ORICON NEWS)
こうして経歴を振り返ると、永山さんは爽やかな青年役から影のある人物まで、幅広い役柄を自然に演じ分けてきた俳優だと感じます。大河ドラマで歴史上の人物を演じた経験もあり、時代劇で「鑿と槌で岩を掘り続ける男」を演じるという今回の企画は、これまでの積み重ねが活きる役どころなのではないでしょうか。

考察|なぜ今『恩讐の彼方に』なのか
ここからは、私の個人的な考えです。
まず感じたのは、公開が2028年という長いスパンで動いていることの意味です。第1期の撮影が2026年5〜6月、第2期の冬パートの撮影が2027年に予定されており、季節の移ろいを含めて撮り分ける構成になっているようです。「冬」の耶馬溪の岩壁で鑿を打ち続ける姿を撮るために、あえて撮影を分けている——そう読み取ると、この映画が自然そのものを重要な登場人物として扱おうとしていることが伝わってきます。
次に、原作が持つ普遍性です。「恩讐を超える」というテーマは、100年以上前の物語でありながら、現代のSNS時代にこそ響く部分があると私は思います。怒りや憎しみが可視化され、増幅されやすい今の社会だからこそ、一つの行為を30年続けることで赦しへ至るという物語が新鮮に映るのではないでしょうか。
そして、永山さんと大森監督の再タッグです。『まほろ駅前』シリーズや『光』で見せた、人間の弱さや暗部をまっすぐ見つめる作風が、この題材とどう結びつくのか。大森監督は、表面的にストーリーを追うと見逃してしまう「重大さ」を映画に収めようとしている、とスタッフの言葉にもあります。派手な展開ではなく、時間の重みそのものを見せる映画になるのではと私は期待しています。
今後の注目ポイント
- 追加キャストの発表:主人公を取り巻く登場人物を誰が演じるのか。現時点では主演の永山さん以外は未発表です
- 第2期(冬パート)の撮影:2027年に予定されている撮影の進捗や、現地ロケの情報
- 公開日・上映時間:2028年の公開としか発表されておらず、詳細は今後の続報待ちです
- 原作との違い:原作の短編をどのように長編映画へ膨らませるのか、脚本の工夫にも注目です
続報が出たら、あらためて記事でお伝えしますね。
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映画の公開前に原作を読んでおきたい方はこちら。菊池寛の作品を書籍でチェックできます。
まとめ
2026年9月25日、菊池寛の名作『恩讐の彼方に』が永山瑛太さん主演、大森立嗣監督で映画化されることが発表されました。原作は1919年発表の短編小説で、大分県中津市の青の洞門にまつわる史実をもとにしています。2026年5〜6月に第1期の撮影を終え、2027年の冬パートの撮影を経て、公開は2028年の予定です。永山さんと大森監督は『光』(17年)以来のタッグで、続報にも期待が高まります。
よくある質問
映画『恩讐の彼方に』はいつ公開されますか?
2028年の全国公開が予定されています。2028年の劇場公開を目指すと報じた媒体もあり、詳しい公開日は発表されていません。
主演と監督は誰ですか?
主演は永山瑛太さん、監督・脚本は大森立嗣さんです。二人は『まほろ駅前多田便利軒』『まほろ駅前狂騒曲』『光』に続くタッグとなります。
原作『恩讐の彼方に』はどんな小説ですか?
1919年(大正8年)に菊池寛さんが発表した短編小説です。大分県中津市の耶馬溪にある「青の洞門」の史実をもとに、鑿と槌でトンネルを掘り続けた禅僧の人生へ創作を加えて書かれました。
撮影はもう終わっているのですか?
2026年5〜6月に京都や大分を中心とした第1期の撮影が終了しています。2027年には第2期となる冬パートの撮影が予定されており、並行してポストプロダクションも進められています。
青の洞門は実在するのですか?
実在します。大分県中津市にある耶馬溪の名勝で、禅海和尚が托鉢で資金を集め、ノミと鎚で30年余りかけて掘ったと伝えられています。1764年に完成したとされ、現在も見学することができます。
キャストはほかにも発表されていますか?
2026年9月25日時点では、主演の永山瑛太さん以外のキャストは発表されていません。物語やキャストの詳細は今後発表される予定です。



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